要点まとめ
商業・法人登記のオンライン申請では電子署名が必須で、政府認証基盤(GPKI)に対応した電子証明書が必要
マイナンバーカードの署名用電子証明書(公的個人認証サービス)は令和2年6月から添付書面に利用可能になった
スマホだけで完結したい場合、iPhone+マイナンバーカード+電子署名くんでPDFに電子署名できます。
商業・法人登記のオンライン申請とは
商業・法人登記のオンライン申請は、法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を通じて行います。会社設立登記、役員変更登記、本店移転登記などの商業登記手続を、インターネット経由で法務局に申請できます。
従来は法務局に直接出向いて紙の書類を提出する必要がありましたが、オンライン申請なら24時間いつでも申請が可能です。登録免許税の減額措置(最大5,000円)も受けられるメリットがあります。
なぜ電子証明書が必要なのか
商業・法人登記のオンライン申請では、申請書類に電子署名を付与することが法律で義務付けられています(出典:登記・供託オンライン申請システム)。
1. 本人確認(なりすまし防止)
登記申請は会社の法的権利関係を変更する重要な手続です。第三者によるなりすまし申請を防ぐため、電子署名による厳格な本人確認が求められます。電子証明書を持つ本人のみが申請できる仕組みです。
2. 改ざん検知(データの完全性保証)
電子署名が付与された申請書類は、後から内容が改ざんされていないことを数学的に証明できます。申請後のデータ改ざんを防止し、登記の信頼性を確保します。
3. 法的効力の確保
電子署名法により、適切な電子証明書で署名された電子文書は、紙の書類への押印と同等の法的効力を持ちます。登記という法的拘束力のある手続において、電子証明書は不可欠な要素です。
商業・法人登記で利用可能な電子証明書
登記・供託オンライン申請システムでは、政府認証基盤(GPKI)を構成するブリッジ認証局(BCA)と相互認証された認証機関から発行される電子証明書のみ利用可能です。
主な利用可能電子証明書
- 商業登記電子証明書
法務省が運営する電子認証登記所が発行する電子証明書。商業登記に基づいて会社の代表者や取締役に発行されます。IC カード型とファイル型があります。 - 公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカード)
地方公共団体情報システム機構が発行する電子証明書。マイナンバーカードに格納されています。令和2年6月15日から、商業登記申請の添付書面情報(委任状を除く)に利用可能になりました。 - セコムパスポート for G-ID
セコムトラストシステムズ株式会社が提供する電子証明書。法人向けの IC カード型電子証明書です。 - その他の民間認証局
AOSign サービス(日本電子認証)、e-Probatio PS2(NTT ビジネスソリューションズ)、TDB 電子認証サービス TypeA(帝国データバンク)など、複数の民間認証局が GPKI 対応の電子証明書を提供しています。
マイナンバーカードで商業登記申請に電子署名する方法
令和2年6月以降、マイナンバーカードの署名用電子証明書を使って、商業登記申請の添付書面(PDF)に電子署名を付与できるようになりました。
利用範囲と制限
マイナンバーカードで署名できるのは、添付書面情報のみです。申請書本体への署名には、商業登記電子証明書など法人の代表者名義の電子証明書が必要です。また、委任状にはマイナンバーカードでの署名はできません。
スマホ(iPhone)での手順
- 登記申請に必要な添付書面を PDF 形式で用意
- 「電子署名くん」アプリで PDF を開く
- 「電子署名」メニューを選択
- 署名用電子証明書の暗証番号(6〜16桁英数字)を入力
- iPhone の背面上部にマイナンバーカードをかざす
- 電子署名付き PDF が生成される
- この PDF を登記ねっとから添付・送信
PC の場合は、申請用総合ソフトと IC カードリーダライタを使用します。詳しい手順は法務省の操作手引書で確認できます。
よくあるエラーと対処法
エラー1:「電子証明書が利用できません」
対処法:使用している電子証明書が GPKI 対応かどうか確認してください。マイナンバーカードを使う場合は、添付書面(委任状を除く)にのみ署名可能で、申請書本体には商業登記電子証明書が必要です。
エラー2:「署名検証エラー」
対処法:電子証明書の有効期限が切れていないか確認してください。また、認証局のリポジトリが計画停止中の場合、署名検証エラーになることがあります。認証局の運転状況を確認してください。
エラー3:「暗証番号が違います」
対処法:マイナンバーカードの署名用電子証明書の暗証番号(6〜16桁英数字)を入力してください。利用者証明用(4桁数字)とは異なります。3回連続で間違えるとロックされ、市区町村窓口での再設定が必要になります。